黒子!黒子!黒子!

2006/01/29

『迅速に果敢に』へのコメント

極東最前線:『迅速に果敢に



私は何もない部屋に友人と2人でいた。


あぁ忙しい、忙しい

あくせくとしながら私は整理している

ウンザリとしながら、たまに溜息をつきながら・・・

「何が忙しいのですか?」って?

何がって見たらわかるでしょう!ファイル整理ですよ。
なかなか見つからないんですよ。目当てのファイルが。

「あぁこんな事ならマメにファイル整理しとけばよかったなぁ」
とまた溜息をついた。

そうです。

私は、探し物をしているのですよ。

頭のパソコンと3時間も向き合いながら、いよいよ発狂しそうになる自分を戒めながら、あのファイルを・・・


「どこにいったのだー?ここに入っているのかな?」
なんてことを口走りながら、一つ一つのファイルを確認している。


「何のファイルを探しているのか?」って?

「あの子だよ」
と私はウザそうに短く言った。
それからしばらく沈黙が続いた・・・



私には、ある「能力」がある。その友人はその事を知らない。

今となったら猫も杓子も持っていた「能力」なので、すでにこのことを「能力」だとも言わなくなったのだろうが・・・
最初は、世界でただ一人、私だけが持つ「能力」だったのだ。
そして現在も一人しか持たない。

その「能力」とは新聞などでお馴染みの「ピックアップ&テレポーテーション」だ。

最近では「ピッテレ」と略された名称の方が、分かり易いのかも知れませんが・・・
「ピッテレ」とは女子高生が呼び出した名称だが、私は「なんともかわいい呼び方だなぁ」と悲しさを感じる。
地方では「ピックポー」と呼ばれているようで、間抜けだ。
「呼び方ぐらい統一しやがれ!」と思ったこともあるけど言わなかった、我慢した。


当時の私は、その「能力」に対し名前などをつけてはいなかったが、なんとなく「クリック」とか「ひと時」とか呼んでいた。

なぜそのような呼び方をしているかというと、頭のパソコンをワンクリックするだけで、ファイルの中に入っている人を呼び出す事ができるからだ。

私は、その「能力」があることに気づいたのは
たまたま、野球場でビール売りのアルバイトをしていたお姉さんを
「持ち帰りたいなぁ」と祈ったあの日だ。

そして、誰もいない家に帰って「あのお姉さんよかったなぁ・・・かわいかったなぁ」と悶々と1人で2時間ぐらい考えていて「おやおやこんな時間だ!明日の仕事の用意しなきゃならん。」「こらっ!仕事モードに切り替えだぞ!黒子め!ウツツを抜かしている場合じゃないぞ、目を覚ませバカヤロー!」と自分の頭を右手で思いきり叩いた時に起こった。

そんな、ある夜の0時・・・

ブイイン・・・ブイン・ヴィン

と鈍い音と同時に頭のパソコンに電源が入ったのだ


瞼の上の方には画面らしきものがある。なんだこれ??
旧型のマイコンのような緑色の文字が点滅している。

真っ黒な画面の中に、緑色の文字

「福井:H18/1/29」

なんだこれ?と思った瞬間←(矢印)が出てきた。
なんともびっくり。
頭で考えた通りにその矢印が動くではないか!!カーソルだ!

子供がマウスをもて遊ぶかのように、頭の中のマウスをグルグル回していた。楽しかった。
しばらくして、さすがにその遊びにも飽きてきたので、私は矢印を「福井:H18/1/29」にあててみたのだ、
黒と緑が反転したので、私は「何かのデータなのか・・・」と薄々気づき始めた。あぁ、なるほど地名と日にちを表示しているんだな。

そして、クリック

「かちり」

ピョイーン・・・・・・・



と激しい光と共に人間が現れた。

なにが起きたのかよくわからなかったが、私は「ごめんなさい、すみません、ごめんなさい」と平謝りしました。(黒子はびっくりすると平謝りする習性がある)

よくみるとその人間は、さっきのビール売りのお姉さんではないですかぁ!!アルバイト用の制服を着ていないので、わかりませんでした。それにそこまで可愛くなかったので。(内心なので言葉には出していない)

2人とも驚いていたのですが、私の方から「はじめまして、黒子です」と勇敢で間抜けな挨拶をしたんですわ。
「制服を着ていない売り子なんぞに臆することなかれ!」ってな感じで堂々と挨拶したよ私は

そしたら「は・・・はぃ」とお姉さん

明らかに怯えている様子

怯えていますし、話する事も特に無い。うーーん・・・
彼女は寝巻き姿でお金も持っていない様子、住まいを聞くと若杉の方に住んでいると言っていたので・・・タクシー代を渡してさようなら

1時間後には「電話番号ぐらいきいておけばよかったかな」と相変わらずの下心

「いやいや下心なんてどうでもいいや。」

「はて・・・?なんだったのよ今のは・・・」

そんなこんなで「ピックアップ&テレポーテーション」という能力を手に入れたのです。もしかしてもともと「能力」があったのか、否かは未だ不明ですが・・・。

分かり易くパソコンで説明すると、街角で出会った人を保存して自由に表示できる。携帯電話で説明するとコピー&ペーストだ。

それからというもの私はこの「ひと時」に没頭していた。まずは友人から「ひと時」した。
あの時の説明は大変だったね。友人もパニックになっちゃって。状況を分かってもらうまで、理由を説明したし、私の頭がおかしく無いことを理解してもらうまで2日かかったね。もちろんこの「能力」のことを友人には口止めしたけど。

『ふぅぅ・・・こんなことやっていたら状況説明だけで一生を費やしてしまうので、もう「ひと時」は辞めよう。』
と決心したが5日で断念!無念!

私の下心は留まる事を知らないのか!
片っ端から、かわいこちゃんを「ピッテレ」していた。(「ひと時」というとイヤラシイからあえて一般的な「ピッテレ」と呼ぶ。
誤解されると嫌だから説明するけど、ボディータッチ無しね。
たまには、ボディータッチしたい衝動にもかられるけど我慢するのよ。
それは、私が私自身に決めたルールだから。

ちょっぴりルール違反するけどね。ふふふ・・・

そして「ピッテレ」した相手には少しだけ話をして「君は疲れているんだよ。お家に帰りなさい」とか「全て忘れなさい、夢をみたのだよ。」という優しく帰してあげることで、表ざたになる事を防御していた。
こちらの連絡先を教えない事で相手からのコンタクトを取れないようにした。

そして私は、知らず知らずの内に暗黙の「ピッテレ」ルールを作っていた。
1.性的関係を持たないこと
2.帰りの交通費は出してあげること
3.おおっぴらにしないこと
4.名前を教えないこと
5.相手には優しく接すること

しかし、私が私自身に作ったルールのせいで制限されることが多い事にすぐ気付いた。
(愚痴)
私、旅行が好きでねぇ。
一つの場所に留まることができないのよ。
だから、旅行先でピッテレできないのよ。帰りの交通費かかっちゃうから・・・お金なくなっちゃうから。
あとね、球場とか駅とか遊園地とか人がいっぱい集まる場所は県外の人間が多いからリスクが大きいのよ。以前「ピッテレ」した女性が鹿児島の人で、鹿児島までの交通費を出した事もあるし、肌のキレイな人だなぁ・・・と思って「ピッテレ」したら韓国人だった事もあって飛行機代やらなんやらで貯金をほとんど使いきってしまった事もあるんですよ。


その後「ピッテレ」は地域で噂にはなったが、大半の人は信じていなかった。
まぁいいや・・・こっそりとバレない方がいいだろうと私は思っていたが。私の考えは甘かった。

というのもこの「ピッテレ」が爆発的に広がったのだ!

後から分かったことなのだが、この「ピッテレ」にはイロイロな特性があるようだ。


特性:
1.「ピッテレ」された人間は「ピッテレ」できるようになる
2.「ピッテレ」した人間は「ピッテレ」された人間の帰りの交通費を出してあげなくてはいけない
3.「ピッテレ」した人間①が死んだ場合、その人間①から「ピッテレ」されたことのある人間②は「能力」を失う。そして人間②から「ピッテレ」された人間(不特定数)も「能力」を失う
4.一度「ピッテレ」の「能力」を失ったら、二度と「ピッテレ」できなくなる&「ピッテレ」されることもできなくなる。

と私が知っているだけでもこんなものだが、もっとありそうだ。


よって1の特性にまず、マスコミは喰いついた。
「ピッテレ」された人間は「ピッテレ」できるようになる
ということで私は「ピッテレ」する度に『「ピッテレ」してくれてありがとう』という感謝の言葉を毎回言われるようになってきた。


あぁ・・・結局みんな「ピッテレ」したいのかなぁ・・・?と、なんとも複雑な気持ちになったのを今でも覚えている。



そして3の特性からすると
「ピッテレ」した人間①が死んだ場合、その人間①から「ピッテレ」されたことのある人間②は「能力」を失う。そして人間②から「ピッテレ」された人間(不特定数)も「能力」を失う
ということで『私が死んでしまうと「ピッテレ」全てがなくなる』とのことで私は現在に至るまで、陰鬱な感情なのですよ・・・


世界でも私は当然の有名人になっていた。
毎日毎日、合コンのお誘い電話が携帯電話のバッテリーを空にした。
なあに・・・なにも私がモテている訳ではありませんよ。
「能力」欲しいのですよ。


みんな「ピッテレ」できるようになりたいだけなんだ!

だからにじり寄ってきているだけなんだろ!

このハイエナ達が!

帰れ!


って言っちゃうと、場がシラケルから我慢した。

ある合コンでこんなことがあった。
酒を飲んだ勢いで私は「自害しちゃうぞ」と可愛く言ってみたら・・・

みんな真剣に「死ぬのはやめろ!」「死なないで」

って言うんだ。真剣に
私は「生きているのでは無く、生かされているのだな」と感じて寂しくなったのを覚えている。





と、そんなこんなで現実に戻った。
結局、お目当てのファイルは見つかず。

そもそも、何を探していたのか?どうでもよくなった。

最近のニュースは「自殺しました!彼女も自殺しました」とうるさい。
どうせ私がテレポートした人間の一人だろう。
わかっているよ。
でも、私が殺した訳ではない。

ピックアップしただけでは、死なないがテレポートすると自殺するらしいな。
私には薄々分かっていたのだが・・・
「能力」を持つものは、誰でも同じ行動を取るのかなぁ・・・と少し残念な思いだ。
「みんなおなじだ・・・」

そして私は未だに「テレポートしても自殺しなさそうな女性」をピックアップしている。



ふらふらとあなたのまちをあるきながら・・・







偉大なる極東さんへ

私は、そんな感じで街を歩いていますよ

ゆっくりと堂々と

そして、私から逃げ惑う人に

目的を与える為に・・・





黒子



投稿者:
黒子 、ブログ名: 極東最前線、日付: 1/29/2006 06:45:05 午後